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三菱電機の“IoT業務用エアコン”開発の舞台裏 ネット活用サービスで目指す事業戦略(1/2)

あらゆる建物の空調を担うエアコン。その存在はもはや当たり前となり、普段から特に気にすることは少ない。しかし、私たちが季節や天候を問わず快適に日々の生活を送れたり、仕事に打ち込めたりするのは、その存在があってこそだ。
 
 これがもし使えなくなったとしたら一大事。特にオフィスビルや商業施設に導入される業務用エアコンにおいては、その場所で行われるビジネスに多大な影響を与えるだろう。だからこそ安定稼働が求められるのは当然で、日々のメンテナンスも重要になる。そんなメンテナンス作業を効率化する仕組みとして、IoTが身近のものになっているのはご存じだろうか。
 
 そんな賢い業務用エアコンを手掛けるメーカーのひとつが三菱電機だ。業務用エアコンは設置から10年以上は稼働し続けるのが当たり前の世界で、こうした設備を個々に管理するのには大変な労力がいる。
 
 そこで三菱電機は2020年5月に空調機器管理システム「MELflo」(メルフロー)を開発。業務用エアコンのリモコンとPCやスマートフォンを連携させて、機器情報や運転データを収集・管理できるようにした。
 
業務用エアコンを設置した管理者が簡単に機器の情報を読み取れるようになるため、メンテナンス業者に状況を伝えやすくなるメリットが生まれる。さらにメンテナンス業者も物件ごとに点検状況を確認・管理しやすくなるため、双方でフロン点検を含めた運用管理を省力化できる仕組みだ。
 
さらに2021年5月には、MELfloをリモートで扱えるようにした新サービス「AirCoNet」(エアコネット)もスタート。クラウド上で機器データやエアコンの運転状況、エネルギー使用量といった情報を蓄積、共有できるようになる他、管理者は異常発生時にメールで通知を受け取れる。メンテナンス業者も状況をリアルタイムに確認できるので、異常発生時にスピーディーに対処するサービスを提供できるようになる。
 
技術者や管理者の人手不足といった業界の課題などもあり、これらは今後欠かせない機能といえそうだが、空調機のハードウェア性能を追求してきた三菱電機にとって、ネット連携のようなハードとソフトの融合は“新たな挑戦”ともいえる取り組みだった。その舞台裏を担当者に聞いた。
 
 
管理しやすい業務用エアコン 法改正も後押しに
 
これまで数々の空調機器を販売してきた三菱電機だが、国内には競合となるメーカーも多く、競争も激しい。そのような背景もあり、製品開発においてはプロダクト側に偏り、機能や性能に目が行きがちになっていた。
 
 しかし、空調機器は長い年数に渡って利用されるもの。その間には部品の劣化による性能の低下や故障もある。製品を納入、設置して終わりではなく、製品ライフサイクルを長い目で見守りたいという思いもあった。MELfloも、施設の中に5台、10台と複数台ある業務用エアコンを10年、20年たっても管理できるように生まれた仕組みだ。
 
 さらに法改正の後押しもあった。2015年に「フロン排出抑制法」が改正され、フロンガスなどの冷媒を外に漏らさぬように監督する義務が、業務用エアコンを設置した建物の持ち主に生じたことが大きい。
 
 MELfloを活用することで、建物にどのような機器が設置されているかをPCやスマホから一目で確認できるようになる。フロン排出抑制法で記録が義務付けられている点検項目も参照できるため、多くの機器を管理しなければならないビルのオーナーと設備業者にとっては渡りに船となるだろう。
 
実際に導入した顧客からも好評だ。三菱電機の静岡製作所で業務用エアコンのコンセプトやシステムの企画・開発を担当している中田成憲氏(静岡製作所 パッケージエアコン開発推進プロジェクトグループ)は次のように説明する。
 
 「お客さまからは、当初『これって便利なの?』と懐疑的に思われることもありましたが、手書きでの管理からPCやスマホでの一括管理に変わる便利さを徐々に感じていただけています。『もっとこうしたらいい』『こんな機能があるといい』という要望も積極的にいただいているので、要点を押さえつつ簡単に使えるという製品を作るために飽くなき追究をしています」(中田氏)

続く

更新日:2021年11月10日

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