ダイキン工業ニュース
2013年3月期に増収増益を見込むダイキン工業。好調の一因になっているのが、2012年11月にフルモデルチェンジしたルームエアコン「うるさら7(セブン)」である。同製品の売り上げは、例年の約2倍ペースで推移している。
開発したのは、ダイキンのマザー工場である滋賀製作所だ。2009年11月にスタートしたプロジェクトでは、製品開発プロセスの抜本的な改革に着手。部門横断で開発データを一元管理する体制に移行した。
そうしたプロセス変革の鍵を握ったのが、自社開発したプロセス管理ツール「スペースファインダー」である。ダイキンはこのツールを外販もしており、村田製作所など多くの製造業で採用実績がある。
スペースファインダーの利用対象になったのは、主力の空調部門に所属する2500人。設計・開発から調達、生産技術、製造と、あらゆる部門がスペースファインダーで1つにつながり、開発データの一元管理を進めた。これでコンカレントエンジニアリングを強力に後押しした。
その結果、ペーパーレスが徹底されただけでなく、開発のQCD(品質・コスト・納期)を大きく左右する開発途中での手戻りを大幅に削減できた。
つくりにくさの指摘件数が3年で65%減
劇的な成果を上げたのが「つくりにくさ指摘件数」の減少である。ダイキンは開発の様々な過程で物づくりレビューの評価会を実施し、部品の組み付けにくさなどを洗い出している。このレビューで駄目出しされると、それだけ開発は滞り、手戻りが発生する。当然、時間とコストをロスすることになる。
だが、スペースファインダーの導入で、滋賀製作所における2012年度のつくりにくさ指摘件数(2013年1月末までの集計)は、プロセス変革を始めた2009年度比で、実に65%以上も減った(図1)。
図1●「つくりにくさ指摘件数」の推移。2009年度を100とした時の比較
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金型部品の生産性試験以降で指摘が入ると、その後の開発スケジュールに大きな影響を受ける。そこで金型を起こす前までに、作りにくさの指摘を極力無くしておかなければならない。
そのために必須になるのが、部門間での擦り合わせだ。空調生産本部商品開発グループの門脇一彦氏は「製造業は擦り合わせの世界。開発に関わる全ての部門が開発情報を決められた場所に格納して、関係者全員がいつも同じ情報を見ていることが欠かせない」と話す。
以前は、各担当者同士が開発データをメールに添付して送り合うことが多く、一元管理が必ずしもできていなかった。これではセキュリティー面でも問題が起きかねない。
更新日:2013年04月19日